「死を乗り越える」なんて言葉がある。
その言葉が、どうもしっくりこない。
私は、今年初めて、心から好きだと思う人が死んでしまうという経験をした。
彼女の死を乗り越えるなんてことは出来ない、そう思う。


言葉のニュアンスの問題で、意味合い的には、私とこの言葉をつかう人達との心境はあまりかわりがないんだと思うんだけども。
だけど、大事なのはそのニュアンスのような気がするんだよ。
乗り越える、っていうのは、それを越えてその先へ行くことだよね。
そしたら、生きて進み続ける私は、死んでしまったその人のことを、後ろへ置いてきてしまうことになる気がする。
いつまでもずるずると引きずって哀しむことが良いというわけじゃない。
いつかは笑って思い出を話したい。それでこそ生きている私なのだと思う。
思い出す時間も短くなる、忘れてる日もある。だけど、後ろへ置いてきたいわけじゃない。
そう思って私は、「死を乗り越える」という言葉が嫌いなんだと思う。
私は彼女と出逢ったことを絶対に忘れたくないし、いつまでも笑って、そして泣きたいと思っている。